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論文内容紹介

最近、私たちが発表した論文の内容を分かりやすく紹介しています。

Dengue virus neutralization and antibody-dependent enhancement activities of human monoclonal antibodies derived from dengue patients at acute phase of secondary infection.
Sasaki T, Setthapramote C, Kurosu T, Nishimura M, Asai A, Omokoko MD, Pipattanaboon C, Pitaksajjakul P, Limkittikul K, Subchareon A, Chaichana P, Okabayashi T, Hirai I, Leaungwutiwong P, Misaki R, Fujiyama K, Ono K, Okuno Y, Ramasoota P, Ikuta K.
Antiviral Res. 2013 Jun;98(3):423-31.

  デング熱・デング出血熱は、フラビウイルス科のデングウイルスにより引き起こされる感染症である。蚊をベクターとして流行が引き起こされ、世界中で25億人に感染リスクがあるとされている。しかしながら、治療薬やワクチン等の予防法は存在せず、対症療法及び蚊の駆除を中心に対策が取られている。そこで、私たちは、タイ・マヒドン大学熱帯医学部との共同研究として、デングウイルス感染患者中に誘導される中和抗体に着目した抗体医薬の開発を目的として、抗デングヒト型単クローン抗体の作製を行った。デングウイルス感染タイ人患者由来の末梢血単核球及びフュージョンパートナー細胞であるSPYMEG細胞(MBL社)との細胞融合法により、136クローンの抗デングウイルスヒト型単クローン抗体産生ハイブリドーマの作出を行い、報告を行った(BBRC, 2012)。
  本論文においては、デングウイルスの4種類の血清型に対し、中和能を強く示していた17抗体を用いて、より詳細な解析の結果を報告した。17種類の内13種類の抗体はデングウイルスエンベロープ蛋白質の1st domain II領域を認識していた。また、全ての抗体が抗体依存性感染増強(ADE)を示したが、ADEの要因と考えられる抗体のFc領域を除去したF(ab’)2抗体は中和能を維持させたままADEを抑えることが確認された。サックリングマウスを用いたin vivo試験では、抗体投与群での生存率の上昇が認められた。
以上の結果より、本抗デングウイルスヒト型単クローン中和抗体はデングウイルス感染症に対する抗体医薬の有力な候補となると考えられる。

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inoue2013jbc

  ヒトに感染して高い病原性を示す新型インフルエンザウイルス株の出現は、世界的な関心事となっています。
  新型インフルエンザ株が出現すると、それに対するワクチンの製造がおこなわれます。世界的な大流行による被害を食い止めるためには、ワクチン供給までの期間を迅速にしなければいけませんが、現状では数ヶ月を要します。新型ウイルスの出現に迅速に対応できる次世代型ワクチンの開発は、人類にとって非常に重要な課題なのです。
  当研究室では、インフルエンザ患者やワクチン接種ボランティアに由来する抗体産生細胞をクローン化し、そこから得られる単クローン抗体を分離してその性質を解析しています。この中に、40年以上前に流行したウイルス株を含む広い範囲のH3N2株を強く中和できる抗体B-1が見つかりました(文献1:Kubota-Koketsu, et al, 2009)。同様の特徴を持つ抗体は異なるドナーからも見つかりました(D-1抗体)。面白いことに、これらの抗体が認識するエピトープを解析すると、いずれもウイルス表面にあるヘマグルチニン(HA)蛋白質の中の2つの領域にまたがるアミノ酸配列であることがわかりました(図Aの“Upper”と“Lower”で示した配列)。過去に解析されたH3型HAの配列(あるいは他の亜型のHAの相当領域)を比較すると、この2領域はともに保存性が高く、変異を受けにくい。我々は、このエピトープ領域の高い保存性がB-1やD-1が広範囲のウイルス株に対して中和能を持つことの主な原因であり、新型ウイルスに対応する次世代型ワクチンのターゲットとして有望であると考えました(文献2:Yamashita, et al, 2010)。
  三量体HAの結晶構造によると、この2領域は外部に露出している部分が少なく、ウイルスレセプター結合部位の近傍でβ-シート構造を形成しています(図B)。このようなエピトープ(複数の領域にまたがっていて、立体的に結びついている)は、アミノ酸配列(一次構造)だけでなく高次構造が重要なことが多いのだが、短い合成ポリペプチドでβ-シートを再現するのは非常に難しい。
  そこで我々は、もともと表面にβ-シートを持った蛋白質をキャリア分子として選び、そのβ-シート部分に変異によってエピトープ由来のアミノ酸を導入したものを考案しました。変異導入の結果、キャリア分子表面にB-1(or D-1)抗体のエピトープとそっくりな構造が形成されるというわけです。ここでキャリア分子のモデルとして選んだのが、緑色蛍光蛋白質GFPです(図C)。GFPは、色素構造を取り巻く形で表面に11本のβ-ストランドが並んだ構造をしています。GFPは全体構造が崩れると蛍光を発しないという便利な性質がありますが、我々が作製した変異GFPも励起光を当てると光るので、β-シートを含む全体構造が保たれている事が即座に確認できました(図D)。これを免疫原としてマウスに接種したところ、HAと反応しH3N2型ウイルスを中和する抗体の誘導が確認されました。さらに、このようにして免疫したマウスにH3N2型インフルエンザウイルスを感染させると、高い生存率と体重回復が見られました(図E)。

Fig(inoue2013jbc)

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The changing nature of avian influenza A virus (H5N1)
Yohei Watanabe, Madiha S. Ibrahim, Yasuo Suzuki and Kazuyoshi Ikuta
Trends in Microbiology, January 2012, Vol. 20, No.1

  H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスは、現在アジア・アフリカの一部地域で常在化している。継続的なウイルス伝播はH5N1ウイルスの遺伝子多様性を誘起し、ウイルスレセプター糖鎖親和性、抗原性、病原性などが変異した新しいウイルス群を出現させている。本総説では、過去5年間に亘るエジプトとの海外共同研究から得られた成果を基に、急激なH5N1ウイルスの多様性拡大がH5N1ウイルス由来パンデミック化の潜在性に及ぼす影響を論説している。本論文は、Cell Pressが出版するTrends in MicrobiologyのJanuary 2012 IssueにおいてHighlightとして紹介されると共に、2013年January Issueにおいて、2012 Top 10 Ed Board Favorite Articleに選出された。

<図の説明>
H5N1ウイルスの生活環。
より複雑化した生活環を形成する現在のH5N1ウイルスは、ウイルス性状を多様化させ、様々な性状を獲得したウイルスがヒトに侵入する可能性がある。

Fig(Watanabe2012)

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Development of two types of rapid diagnostic test kits to detect the hemagglutinin or nucleoprotein of the swine-origin pandemic influenza A virus H1N1.
Mizuike, R., Sasaki, T., Baba, K., Iwamoto, H., Shibai, Y., Kosaka, M., Kubota-Koketsu, R., Tang, C.S., Du, A., Sakudo, A., Tsujikawa, M., Yunoki, M., and Ikuta, K.
Clin. Vaccine Immunol., 2011 Mar;18(3):494-9.

  3種類のインフルエンザA型ウイルスの遺伝子再集合により出現したパンデミックインフルエンザH1N1(H1N1pdm)は2009年4月にメキシコに流行が確認され、その後世界 に広まりパンデミックを引き起こした。流行初期の段階において、既存の季節性インフ ルエンザA及びBウイルスに対して開発されたイムノクロマトグラフ(IC)キットに頼っ て診断を行っていたが、これらのキットは季節性インフルエンザに比べH1N1pdmに対 し感度が低いことが報告された。本研究では、H1N1pdmに反応し、季節性インフルエン ザA型(H1N1及びH3N2)及びB型に反応を示さないマウスモノクローナル抗体の作製 を行った。このうち、ヘマグルチニン(HA)認識抗体および核タンパク質(NP)認識抗体を用 いてH1N1pdmを特異的に検出するキットを開発し、インフルエンザ様疾患患者由来の鼻 腔洗浄液及び鼻咽頭ぬぐい液を用いてキットの評価を行った。両キットの特異度はHA認 識抗体を用いたキット(HAキット)で93.0%、NP認識抗体を使用したキット(NPキッ ト)で100%を示し、一方H1N1pdm検出感度はNPキットで85.5%、HAキットで49.5%、 既存の季節性インフルエンザキットは79.5%を示した。抗H1N1pdm NP抗体を使用した キットはH1N1pdmの正確な診断に有用であると考えられる。

Mizuike

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Acquisition of human-type receptor binding specificity by new H5N1 influenza virus sublineages during their emergence in birds in Egypt.
Watanabe,Y., Ibrahim, M.S., Ellakany, H.F., Kawashita, N., Mizuike, R., Hiramatsu, H., Sriwilaijamen, N., Takagi, T., Suzuki, Y. and lkuta, K.
PLoS Pathog. 7, e1002068, 2011.

  高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1亜型は現在、中国、インドネシア、ベトナム、 エジプトなどの一部地域において鳥類における感染流行域を獲得している。 特に近年、エジプトにおける偶発的なヒト感染事例が頻発しており、 2009年以降、全世界の半数以上の人感染事例が同国より報告されている。 本研究では、エジプト流行株の系統発生及びレセプター糖鎖に高い結合親和性を獲得した新しいウイルス郡が鳥類間伝播の過程で出現していることを明らかにした。 本研究結果は、現在エジプトでヒト感染例数が際立って多い原因を説明しうるものであると同時に、ヒトにより感染しやすい変異ウイルスが鳥類間伝播の過程で出現する可能性があることを示した初めての報告である。当該論文はPLoSpathogens誌に掲載され、May20111ssueにおいてFeaturedResearchに選出された。 また、当該研究成果を第58回日本ウイルス学会において報告した際、共同通信社を介して情報配信された。

Watanabe2011PLosPath

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